●『神州纐纈城』・・・しんしゅうこうけつじょう。伝奇小説作家 國枝史郎(くにえだしろう)の代表作の一つ。作者38歳の時の作品。大正14年〜翌年10月「苦楽」に連載されるが、未完に終わった。昭和8年(
46歳)、春陽堂から前編が発行される。その後、入手困難となり「幻の名作」といわれた。昭和43年(没後25年)、桃源社から再版されるや再び反響を呼ぶ。“三大大衆文学”の一つに数える人もいる。平成16(2004)年には石川
賢とダイナミックプロが漫画化、この未完の作品に結末をつけた。
色彩の煌めき(きらめき)が心にしみるのは、サザンが流れる真夏の抜けるような青空の下ではないかもしれない。また、ディズニーランドとか北海道とか、どこかの花の絨毯の中ででもないかもしれない。
深い闇の中で、ふと発光したり、照らし出された色彩こそが、私たちの心を強く揺さぶり、そして時に慰める。そんな気もするのである。
『神州纐纈城』。この、題名からして何ともおどろおどろしい小説には、果たして深い闇が立ちこめていた。いたるところに死臭が漂い、そして阿鼻叫喚。憎しみとか、怨念とか、悲しみとか、絶望が、渦巻く。それは“四苦八苦”に迷う人間の、実存的姿であるかもしれないのだ。それにしても、地獄である。
しかし、その暗い暗い物語空間にこそ、色彩は煌めき、妖しく揺れる。感光液の中で印画紙が次第に豊かな色彩を帯びてくる、そんな時の息を飲むような瞬間。そんなカメラマンの至福の時に、私たちこの『神州纐纈城』で立ち会うことができる。そんな気がする。
かの三島由紀夫がこの『神州纐纈城』を絶賛しているが、むべなるかな。
『神州纐纈城』を読むには
『神州纐纈城』(桃源社 昭和43年)
『國枝史郎伝奇文庫 神州纐纈城』(講談社 昭和51年)
『神州纐纈城』(六興出版 昭和57年)
『大衆文学館 神州纐纈城』
(講談社 平成7年)
『マンガ 神州纐纈城
第1-4巻』(平成16年 講談社)
などで読むことができる。
■『神州纐纈城』を持つ図書館
・国立国会図書館→(    を所蔵)
・東京都大田区立馬込図書館→(   を所蔵)
※ その他の図書館で『神州纐纈城』発見されましたら、BBSでご報告ください。
國枝史郎について
松竹座の座付き作家になる
明治20(1887)年10月4日、長野県茅野で生まれる。県立長野中学校では剣道に熱中。友人らと山で盛大なたき火を作って周りを驚かせたりした。後に退学処分。東京本郷の郁文館中学に転校した。明治43年(23歳)、早稲田大学英文科に入学。演劇に関与するも、大正3年(27歳)、大学を去って関西に移住、大阪朝日新聞社に入社した。関西歌壇に接近したのはその頃である。大正6年(30歳)、新聞社を退社して松竹座の座付き作家となった。大正9年(33歳)、バセドー氏病悪化のため、帰郷。
たくさんの顔を持つ作家
その後、木曽福島をへて岐阜の中津川に落ち着き、作家活動を開始。宮川茅野雄、鎌倉参朗、市川末緒、西井菊次郎、柳内白来、硝子庄之介、奈良うねめ、神戸卓三といった多数のペンネームで書きまくった。自らの創作なのに「○○○作 國枝史郎訳」と捻ることもあった。大正11年(35歳)、「講談雑誌」に『蔦葛木曾棧(つたかつらきそのかけはし)』の連載。大正14年(38歳)には「苦楽」に『神州纐纈城』の連載した。昭和2年(40歳)、健康のために習い始めたダンスに熱中し、後にダンス教師の資格を取り、ダンス教習所を開くまでになった。昭和14年(52歳)、東京京橋にロゼッタという喫茶店を開店。その頃は文筆活動から離れていたようである。
昭和17年(1942年 55歳)夏、喉に異変があり、翌年の4月8日に没する。56歳だった。現在、故郷の長野県茅野市の宗湖寺で眠っているという(
)。
国枝史郎の住んだ永楽荘とは
国枝は昭和8年(46歳)、 名古屋市外新舞子から大森に転居。一度新舞子に戻るが昭和11年(49歳)、再び上京して大森区新井宿に住んだ。「文学年鑑」によると最晩年の昭和15年〜17年の住所が、新井宿2丁目の永楽荘(栄楽荘?)になっているという。そのアパートは、闇坂(くらやみざか)を上りつめた辺りに建っていたそうだ。
参考文献
●『神州纐纈城(上)(下)』
(國枝史郎 講談社 昭和51年初版)
※「『神州纐纈城を読む』」(横溝正史)P.189-192
※「解題」(八木 昇)P.193-194
●『大田文学地図』
(染谷孝哉 蒼海出版 昭和46年)P.130
●『大衆文学大系 12』
(講談社 昭和47年)
●『馬込文士村ガイドブック 改訂版』
(1996年 大田区立郷土博物館 編) P.38
●「新潮」(昭和46年 一月臨時増刊号)P.101
※「小説とは何か」(三島由紀夫)
おすすめサイト
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2007.4.14
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