生まれて初めて、クラシックバレーを鑑賞する機会に恵まれた。
坂の多い渋谷の、何という坂か知らないがのぼりつめてNHKホールの前に立つと、
そこは素敵なお洋服をきたお嬢様方をつれた素敵なご家族の方々で溢れていた。
一瞬、私の来る所ではなかったか!?との不安がよぎったが、
心を強くしてホール内に入った。
演目は、森下洋子氏がプリマを務める松山バレエ団による「白鳥の湖」。
森下氏は、クラシックバレーを知らない私も昔から知っているくらい高名な方だ。
バレー歴50年というからすごい。
彼女の踊りを見るのが一番の目的だ。
オーケストラの前奏があってしばらくして緞帳が開くと、そこは、
まばゆいばかりのお伽噺の世界だった。
舞台から落ちそうなほどたくさんの人が、
台詞のない無音の世界を(むろんオケの演奏はあるが)、
カタリカタリを音をさせて飛び回る不思議な空間。
もの珍しいので視線はどうしても中央にいってしまうのだが、
舞台の端のほうで踊っている人もはりつめた演技をしているのに驚かされた。
昔のことだが、
ジャズにハマっていたはずの我が妹が突然トーシューズを買ってきて家族を驚かせたことがあった。
また福祉畑バリバリの妻も、昔「バレーやりたい!」といって両親を手こずらせたことがあるという。
二人とも実際にやるまではいたらなかったようだが、
やはり男性には計り知れないほどの魅力をバレーは多くの女性に放射しているようである。
そんなことを思い出していた。
舞台には蒼いドライアイスの煙が流れ、
そこを肩をふるわせた一羽の白鳥が、
ツツツッーと滑るようにしてやってきた。
なんと可憐で、そして悲しげな白鳥だろう。
その悲しげな白鳥を、王子がふわっと温かく受け止める。
森下洋子氏は全く一羽の白鳥であった。
足先までわななかせ、悲しんでいる白鳥がいるとしたらおそらくそういった動作をするんだろうなと思いながらみていた。
ホールの入口でもらったチラシに松山バレー団からのメッセージがあった。
「・・・つまづこうがわらわれようが貧しかろうが、他に甘んずることなく、己を第一の頼りにして、自己の力を源として・・・」
なる言葉が目に飛び込んできた。
舞台の感激とともにこのチラシも大切にとっておこう。 |