シャコンヌというバッハのスゴい曲がある、
と母から教わった。
母はクラシックに詳しくなかったが、
若い頃聴いたシャコンヌが相当印象に残ったらしく、
そのことはよく言っていた。
でも私は、母が生きているうちは、
あえてシャコンヌを聴こうと思わなかった。
初めてシャコンヌを聴いたのは、
ずいぶん後になって、ギターでのシャコンヌだった。
セコビアがギターでシャコンヌを初演した時の録音だった。
ラジオのアナウンサーがいうには、
この演奏は当時評判が悪かったとのことだ。
演奏うんぬんがというよりも、
バイオリニストにとって大切な曲をギターで弾いちゃったことに対する「なんたることか!」だったらしい。
シャコンヌには、ギタリストからもバイオリニストからも熱い視線を注がれているらしいことをその時知った。
シャコンヌという映画を見たことがある。
一人の有能なバイオリニストが志しを貫こうとして楽団とぶつかり、
楽団を追われるというお話(だったと思う)。
バイオリンを抱えて路傍でシャコンヌを演奏する彼であったが、収入の道が途絶えているので、しばらくして貧しさのどん底にたたき込まれる。
バイオリンを失い、それでもカセットに吹き込んだ自らのシャコンヌを流しているが、
それも失って、町に立ちつくすというお話だった(と思う)。
バイオリンを失っても、
カセットデッキを失っても、
彼の耳の中ではとうとうとシャコンヌが流れていた。
今、私は、ギターでそのシャコンヌにチャレンジしている。
赤いバイエルの小学生がベートーベンの熱情を弾くようなモノだが、
三島の年齢も越えてしまったことだし、
やりたいことはやっておこうと思ってチャレンジしている。
1音でも2音でもつながると、自分で自分の音に感動してしまう。
けっこう安がりなレジャーである。 |