今、下母澤 寛の『勝海舟』(全6巻)に取り組んでいる。
読み通すことができたら、今まで読んだ本の中で一番の長編になるだろう。
この本を選んだ理由は、
著者の下母澤が馬込文士であることと、
また主人公の勝海舟がここ大田区といろいろと縁のある人物であること。
たしか、洗足池あたりに海舟の別荘と墓があったし(あるし?)、
例の江戸城の明け渡しについての西郷隆盛との密談は池上の本門寺でなされたと聞く(かなりうろ覚え)。
そこらへんのところも確かめたいと思っている。
下母澤 寛の『勝海舟』といえば、
かれこれ20〜30年ほど前、NHKの大河ドラマになった 。
渡哲也扮する若い勝海舟が、
睡眠時間を削り、体力の限りを尽くして、蘭学を学ぶという場面はよく覚えている。
勝海舟の頃は、蘭学を志してもそうそうと蘭和辞典なるものが手に入らない。
辞典一冊で家が一軒建つという時代である。
貧しい勝海舟には望むべくもない。
全財産をはたいて辞書を借り、毛筆で筆写する。
筆写するのは二部。
一部は自分が使うための辞書であり、
もう一部は売って、借金を返済しようというのだ。
辞書の筆写も相当進んだある日のこと、土砂降りの雨となる。
外出先から海舟が家に戻ると、あばら屋の天井からしきりに雨漏りし、
彼が苦労して筆写した辞書の束は濡れて全部ダメになってしまうのだ。
海舟は、その絶望感にうち勝ち、また初めから筆写していく。
勝海舟を演じる渡哲也は、目が血走り、悲壮感が漂っていた。
まさに迫真の演技であった。
じつは、渡哲也、そのとき重病にかかっていたのである。
暫くして、勝海舟役は松方弘樹にバトンタッチされた。
今、 下母澤 寛の『勝海舟』を読みながら、
ドラマの事や、ドラマを見ていた頃のことを思い出している。 |