励ましてくれる自殺者

広島での被爆体験を綴った小説『夏の花』の作者・原民喜は、この小説の刊行後2年(56年前の3月13日午後11時30分)して、JR中央線吉祥寺と西荻窪間の線路に身を横たえて生涯に幕を下ろしました。

新潮文庫版『夏の花・心願の国』の解説で、大江健三郎が原民喜の死を次のように評しました。「原民喜は狂気しそうになりながら、その勢いを押し戻し、絶望しそうになりながら、なおその勢いを乗り越えつづける人間であったのである。そのように人間的な闘いをよく闘ったうえで、なおかつ自殺しなければならなかったこのような死者は、むしろわれわれを、狂気と絶望に対して闘うべく、全身をあげて励ますところの自殺者である」と。戦後において自殺者を自殺したことにおいても顕彰した、まれな文章だと思います。

参考文献:
・『夏の花・心願の国(新潮文庫)』解説
 (原民喜 新潮社 昭和53年8刷 )

・ 『大田文学地図』
 (染谷孝哉 蒼海出版 昭和46年)P.73-74

『新井宿地図』(日本地形社 昭和22年)

※原民喜は、昭和21年頃、馬込文学圏(南馬込3丁目)の長光太方に寄寓しています。

※当ページの最終修正年月日
2008.2.29